こんにちは、広報の林です。
今回ご紹介するのは働く人の声を届ける「coe(コエ)」というサービスの開発事例です。
皆さまの会社には、従業員の声を聞く仕組みはありますか?
実は社員による改善提案はアイデアの宝庫です。問題を報告すれば1件当たり300円を支払う仕組みを作ったところ、トラブル・不正のリスク早期回避や莫大なコスト削減に繋がった企業もあります。
長らくSDGsなど企業の経営課題をサポートされている株式会社Drop様(以下、Drop様)から、企業と従業員の双方がよりよく生きるための声をあげる仕組みを作りたいというご依頼をいただきました。
このcoeについて、Drop様と開発を担当したエンジニア伊藤に開発の経緯や今後の展望、なぜ弊社に依頼していただいたのか等、ロングインタビューを行いました。
coe開発の経緯は?

林:Drop様といえば元々SDGsへの取り組みのサポートや環境や人権などの経営課題に対してコンサル的な立場で支援されていますよね。今回働く人の声を届けるサービスを作りたいと思われたのはなぜですか?
Drop米田さん:私たちは環境にも社会にも働く人にもいいようにやっていこうっていう試みを続けてきたのですが、もっともっと深く掘っていったら働く人の人権が侵害されてるかもしれないっていうことに突き当たったんですね。豊かになるために一生懸命働いているのにそのせいで命を絶ってしまったり、復帰することができない方が日本では非常に多いんですよね。その結果、その方々のご家族など涙を流してしまう人がいると。
サステナビリティの文脈で世界に広げてみるともっと凄惨な状況もあるんですね。私としては胸が痛くて、そういうのをなくしたいからDropを立ち上げたっていうところがあるので、身近な人が自分の心と体を大切にして欲しいっていうところから考えに至ったっていう感じです。
林:誰もがよりよく生きていくためのサービスという感じなのでしょうか。
Drop米田さん:まさしくそうです。現場で働く人の声は、本来一番経営に届くべき情報なのに、一番届きにくい。「言っても変わらない」「特定されるのが怖い」「わざわざ言うほどでもない」こうした壁で、不満も改善のヒントも経営層の手前で消えてしまいます。
一方で経営側も悪意があるわけではなく、現場で何が起きているかが見えていない。お互いに見えている情報が違うだけで、すれ違いが起きている。coeは、その間に第三者として入って声を受け止め、噛み砕いて届けることで、対立ではなく歩み寄りを生む「橋渡し」をしたいと考えて作りました。
匿名の目安箱とcoeの違いは?
林:働く人の声を匿名で企業に届けるというと、Googleフォームやkintoneのようなアプリを使った目安箱のような窓口を設置している企業もあると思いますが、そういった窓口とはどう違うのですか?
Drop米田さん:声を集めることに関してはGoogleフォームでもできるんですけど、声を上げた人が本当にどういう状況にいるかとか、何を解決して欲しいかっていうところは窓口の担当者や経営層にとって最もノウハウが必要で価値があることなんですね。これをアプリとシステムの機能だけじゃなくて、我々が運用代行というかたちで人力を入れているというのが一番の違いですね。
声を受けた企業が何をどう改善すればいいのかを導き出して背中を押すためにも、coeが一次請けとなり翻訳してくれます。
具体的には、
- 声を送信する前(coe worker) : AIによるヒアリングで声を挙げた従業員の本音や望みを確認
- 声を送信した後(coe company) : AI分析/アドバイスで企業側の対応を促進
のようなかたちでサポートしています。

林:なるほど。従業員用と企業用があるんですね。従業員用の「coe worker」では、AIがチャット形式の壁打ち相手となって何に困っているのか企業側に内容が正確に伝わるように翻訳者となってくれるんですね。
エンジニア伊藤:企業側の「coe company」では、各相談内容に対してどれくらい緊急か、リスクがどれくらいありそうかをAIで分析・判定させて企業へ通知しています。あとは、その声をあげた従業員に対して企業が取るべき行動についてAIがアドバイスしてくれます。
Drop米田さん:アプリ上では、声をあげたご本人様が同意された場合のみですが、名前を伏せた状態で企業と双方向にメッセージをやりとりできるというのもポイントです。Googleフォームだと相手の名前や連絡先の入力を必須にしない限り、匿名で声を聞くことはできても、もっと詳しくその話を聞きたいってときに困りますよね。
アプリにしたらプッシュ通知がくるので、必要な時だけその情報に触れたり、やり取りができます。
窓口が明確っていうのも結構重要で、例えば大企業だと相談窓口を作って何かあったらここに送ってくださいと周知するんですが、そんな頻繁に送るものでもないのでいざ社員が送りたいという状況になったときに「どこに送ればいいんだっけ?」となるんですよね。その点、アプリ化しておけばLINEのような感覚で直感的に操作ができる。声を送るハードルを極力下げたかったんです。
coeの競合にあたるサービスは?導入企業様の事例

林:coeの競合にあたるサービスはありますか?
Drop米田さん:競合と言い切れるのかはわかりませんが、同じようなサービスで言うと国内で働く外国人労働者向けの通報窓口があるんですよ。ただ、労働者が人権侵害を報告するという要素が強いんですよね。あとは、定点アンケートなどを行うサーベイもそうですね。
それらは、同じ領域ではありますが立ち位置が違うと思っています。Dropが間に入って翻訳・深掘りし、双方向で対話を回す点は、フォーム型の窓口にもサーベイにもありません。coeは人権侵害などの緊急時の声をあげることもできますし、例えば「エアコンの風が寒い」とか本当に些細なことでも面と向かって言いにくいようなことでも気軽に送れるのが特徴です。
ポジティブな声、日常の声、緊急時の声までまるっと受け止めて企業の価値を向上させていきましょうというものですね。
林:なるほど。通報となるとなんとなくハードルが高いですもんね。また、ネガティブな意見だけでなく企業にとっても励みになるような仕組みがいいですね。どんな企業様が導入されているのでしょうか?
Drop米田さん:従業員80名程度を抱えられているタクシー会社さんが導入してくださっています。普通のタクシーだけじゃなくて介護タクシーも手掛けられている企業様ですが、社長と副社長が一昔前は「3K労働」と言われていたタクシー業界のイメージを変えたいという思いをお持ちでして。ドライバーが安心して働ける職場にしたい、生き生きとやれる環境を作ってあげたいというお考えがあったんですね。
林:そのためにcoeをどのように使われているのでしょうか?
Drop米田さん:ドライバー同士やドライバーと内勤って普段ほぼコミュニケーションを取らないんですね。個人事業主みたいなものなので。朝は「おはようございます」「アルコールチェックします」「行ってきます」で、帰りは売り上げを事務所に渡して「お疲れ様」だけの日々なんです。そんな状況を改善したいという思いと、何か不満や困りごとを抱えている従業員に対してのフォローとして使われています。
林:企業様からなにか反響はありましたか?
Drop米田さん:ポジティブな声も従業員から届いたそうです。例えばですが、会社が良かれと思って、駐車場の出口のカーブミラーを大きくしていたそうなんですが、「とても嬉しかったです!ありがとうございました!」というような声が返ってきたそうです。「社長には良くしてもらってます」とかもありましたね。
林:スーパーマーケットでもお客様の声に対しての店長のお返事が貼りだされていますよね。どのような対応をしてくださったのかも当然大切ですが、対応しようとしてくれている姿勢に安心感を覚えますよね。
coeはどのような企業におすすめ?今後の展望は?

林:法令の施行に合わせて窓口の設置や刷新を検討される企業様も多いかと思いますが、改めてcoeはどのような企業様におすすめのシステムなのでしょうか?
Drop中西さん:働いてる人のレイヤーが様々で多種多様な人材を抱えておられる企業様だと特に力を発揮できるかと思います。例えば、本社で働いてる人もいれば工場で働いてる人もいるとか、正社員、契約社員、パート・アルバイトといった雇用形態の違いもそうですね。そういった企業様では、経営層から少し距離があるような立場の人も多いので、coeのAI分析機能がお役に立つのではないかと思います。
林:経営層との距離が遠いと、現場の実情やそこで働く人の本音や望むことが見えづらいですもんね。その課題をAIが間に入ることで翻訳してくれるということですね。今後の展望はありますか?
Drop米田さん:法令の関係で、従業員数300名以上の企業は内部通報の窓口設置が義務付けられているんですね。(※)まずはそういった企業様に選択肢として検討していただきたいですね。それくらいの規模になると、誰が送った声なのかも特定されにくいというメリットもあります。もう一つは、悪いことは隠しがちになってしまう、空気感や力学が働くのもこのくらいの規模感だと多い印象です。匿名性を担保することや、不正を防ぎ人権侵害から守り、働きやすい環境を作り企業価値を高めるために私は経営者視点で絶対に必要だと思っています。
実際に社内に隠れていた声をたくさん集めて問題解決に繋げることにチャレンジした企業様もあり、声をあげることに報酬を出したら問題が2万件も上がってきて、意義のある施策に繋げられるなどの成果を上げた事例もあります。
(※)公益通報者保護法が改正。「内部通報制度」で不正をストップ!
(参考)従業員が企業に対して声をあげることで良い影響を及ぼした他社の事例
セーレン、報酬300円で問題報告が年2万件 川田会長「悪い情報は上がらない」
今後の展望としては、我々のミッション「社会の仕組みをよりよい姿に変え、ビジネスによって好循環を生み出す。」を目指すとすると、労働人口33億人全てというのが目標になるのでしょうけど(笑)
まずは、日本国内で100万人の声を集めるのを目標にしたいですね。声が集まると、何に困っている人が多いのか分かってくるので、どう対処していくのがいいのか見えてくると思うんですよね。
林:33億人!!なんとビッグな数字なんでしょう!
これからの時代におすすめのcoe活用方法は?

林:実はこういう使い方もできるんですよ!というまだ認知されていないcoeの活用方法があれば教えてもらえませんか?
Drop米田さん:先ほど競合にあたるサービスのところでも少し触れましたが、coeは日常の小さな声・ポジティブな声まで含めて、起きたその瞬間に受け止める「常設の橋渡し」です。なので、従業員満足度を上げるためにも使っていただけるのではないかと思います。
例えば、丸亀製麺を手がけるトリドール様は「従業員の幸せ度をAIとの対話5分でスコア化した」というニュースが報道されていました。AIと従業員が対話して従業員の声を聞くことで、安心感や士気の向上に一役買ったという事例ですね。
人手不足の時代に採用にコストをかけるより、信頼できる社員に長く働いてもらう方が企業と従業員の双方にメリットがあると思うので、ぜひ従業員の満足度向上にも使っていただきたいですね。
林:なるほど。何かあったときだけではなく、日ごろから声をあげる、心の内を話すような仕組み作りの手助けにもなるということですね。
(参考)AIが組織に良い影響を及ぼした他社の事例
トリドール、従業員の幸せ度をAIとの対話5分でスコア化 離職率12.9%減少
弊社にcoeの開発を依頼された理由は?開発の過程でUI/UXや機能面で譲れなかったこだわりは?
林:今回、なぜ弊社にcoeの開発を依頼してくださったのでしょうか?
Drop米田さん:サービス系の開発だとラボ開発で柔軟に対応できる企業さんがよくて、以前から別件でもご一緒しているHappyLifeCreatorsさんにお願いしたという経緯です。これまで何度かお仕事をさせてもらうなかで信頼関係が築けていたので、今回も依頼させていただきました。
林:ありがとうございます。開発の過程でUI/UXや機能面で譲れなかったこだわりはありますか?
Drop中西さん:使い慣れているUI/UXから乖離せず、AIが当たり前に使われている世の中なので、そこで得ている体験と同じことがcoeでも出来るようにしたいということですね。そのあたりを担当の伊藤さんにも重点的にお願いしてやっていただくことが多かったです。
林:実際システムが出来上がってそのような仕上がりになっていますでしょうか?
Drop米田さん:はい、おかげ様で。ありがとうございます。
林:そう言っていただけて、安心しました。良かったです!開発中にどのような壁にぶつかりましたか?もしあればどのように弊社と乗り越えたのかもお聞きしたいです。
Drop中西さん:うまく行かなかったことというより一緒に乗り越えたお話ですが、特に最近の開発では色々な場面でAIの技術を取り入れていただくことが多いんですね。どのようにプログラムを組んでいくかだけでなく、そのAIにどういう指示を出すかであったり、質問に対するAIの回答スピードだったりそういったポイントをよく相談させてもらうことが多いですね。
林:なるほど。中西さんから伊藤に「追加でこういうプロンプトを入れてください」と依頼されるようなイメージでしょうか。
Drop中西さん:そうですね。それもありますし、伊藤さんの方からご提案いただくこともあります。
林:伊藤からの提案で印象に残っているものはありますか?
Drop米田さん:「こんなことできますか?」という質問に対して「こういう形なら実装できますよ」とイメージしやすいような形で教えてくださったり、あとは「実装はできるけどこういうリスクがある」とか、落とし穴を先回りして教えてくださるのもありがたいですね。こちらも事前にリスクを把握しておけると仕様の変更もスムーズに対応できるので、無駄な時間が発生しないです。
あとは過去に修正した箇所をもう一度アップデートしたいと伝えても、嫌な顔をせず対応してくださるところかな。提案ではないですけど、受け入れてくれる度量が大きくてとても助けられています。
林:だそうです!伊藤さん!
伊藤さん:嬉しいです(笑)ありがとうございます。
林:同じ方向を向いている感というのでしょうか。この人ならわかってくれる、言いやすいなという関係性はいいですよね。
Drop米田さん:家の空間の話ですが「暑いも寒いも思ったことがないのが快適」と言われてるんですよね。本当にそんな感じで、違和感や困りごとを抱えることなく開発を終えられました。あとは、軽微な修正とじっくり考えて進めなくてはいけない作業のバランス感覚というか。
林:仕事の進め方についてですか?
Drop米田さん:そうですね。時間がかからないものは依頼したその日中にすぐに対応してくださって、仕様にも関わるような依頼については丁寧に進めてくださってましたね。
林:ありがとうございます。不安を感じることなくcoeをリリースできたとお聞きして、弊社としても安心しました。
最後に、開発を伴走するシステム屋さんに期待することを教えてください!

林:技術的な面で助言したり寄り添ったりするのは当然ですが、+αの部分でより良いサービスを創るパートナーとしてどういうシステム屋さんだったら心強いと感じますか?
Drop米田さん:実際にしてもらって嬉しかったことですが、一緒に販売の機会を狙うなかでリリースしたあとのことまで気にかけてくださったのはとても助かりましたね。「導入実績が欲しいんですよね」という話を牧長さん(HLC代表)にしたら、ご厚意で周りの企業様に声をかけてくださって。
林:気にかけてくれるだけでも心強いですよね。
Drop米田さん:はい、まさしくその通りです。そのうちの一社が、coeを日報として使ってくださって我々も想定していなかったような新しい発見がありました。あと、我々Dropは社会課題を解決しようとして動いているので、御社の「ITで社会課題を解決する」というミッションとの相性も非常に良かったと思います。
誰かの困りごとを解決したいと思っている人と一緒にものづくりができると、根っこの考えで共通する部分があるのでやりやすかったです。
林:同じ思いを持っている人にお願いできると「相手のやろうとしていることがわかる」感覚というか、やりやすいですよね。安心してご依頼いただけたようで何よりです。嬉しいお声をありがとうございます。
Drop米田さん:33億人に使っていただくまで、まだまだよろしくお願いいたします!笑
林:もちろんです!笑
まとめ
今回はSDGs黎明期から企業の経営課題に寄り添ってサポートされているDrop様にインタビューをさせていただきました。
弊社に対する評価としていただいた「暑いとも寒いとも感じない快適な空間に近い」というお声が印象的で、システム屋さんとして違和感や不快感を与えない安心できる寄り添い方とはなにかを改めて考えるきっかけにもなりました。
弊社のミッション「ITで社会課題を解決する」とも共鳴する「coe」は、企業とそこで働くすべての人にとても意義のあるサービスなので、ぜひ多くの方に利用していただきたいなと思います。
また、最近は今回のようなAIを活用したサービスのご依頼を非常に多くいただいております。coeの場合は、生成AIが従業員と企業をつなぐ翻訳者の役割をしてくれていますが、他にも需要・数値の予測や危険予測、カスタマーサポートの効率化等、AIの使いどころは様々です。
AIの使いどころや最大限活かすシステムを作りたい方は、ぜひ一度壁打ち相手としてご相談ください!
一からサービスを創るのはハードルが高く感じるかもしれませんが「これを解決したい!」というざっくりしたアイディアをいただいて、それを一緒に形にしていくことは得意です。まずはフランクに「こんなんできますか?」と聞いてくださいね。
関連リンク
株式会社Drop https://drop.ne.jp/
coe worker https://coeworker.jp/
coe company https://coecompany.jp/

